大判例

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東京高等裁判所 昭和51年(行ケ)61号 判決

事実及び理由

一  請求の原因(一)ないし(三)の事実及び引用例の記載内容は当事者間に争いがない。

二  そこで、審決を取り消すべき事由の有無について検討する。

(一)  成立に争いのない甲第三号証(引用例)によれば、引用例の考案に係る装置は、工場等における排煙を煙突から放出する前に、これを洗浄して浄化することを目的とするものであることは明らかである。

しかしながら、成立に争いのない甲第二号証(本願明細書を含む)によれば、本願考案の目的に関しては、考案の詳細な説明の冒頭に「本考案は燃焼排気ガス、媒煙の様な汚染気体を清浄気体に洗浄する装置に関するもので」との記載が認められるのみであるが、これによれば自動車等の内燃機から排出される汚染気体を排気圧に抵抗を与えることなく洗浄することを目的とするとは到底いえない。そして、本願考案の要旨(当事者間に争いがないこと前記のとおり)たる構成をみても、自動車の排気ガスの洗浄に使用が限定されるものとは認められない。

そうすると、本願考案の目的には、工場等における排煙の洗浄をも含むことは明らかであつて、引用例の目的との間に格別差異があるわけではなく、もとより技術分野は共通である。

(二)1(1) 本願考案と引用例の考案とはいずれも汚染気体洗浄装置に関するものであることは当事者間に争いがない。

(2) そして、引用例の考案における「吸煙管19」は本願考案における「汚染気体導入室」に、引用例の考案における「推進螺旋5をもつ回転子R」は本願考案における「螺旋翼をもつ回転体」に各相当し、引用例の考案における「混流機胴D」は本願考案における「洗浄室」に相当するとともに本願考案における「導入管」の機能も具備しているという審決の判断に誤りはない。

すなわち、

ⅰ  請求の原因(四)2(1)ⅰ記載の原告の主張は、本願考案が自動車のエンジンの排気の洗浄装置であつて、しかも導入管内の回転体をエンジンによつて回転させるものであることを前提とするものであるが、前記甲第二号証によれば、右のようなことは本願明細書には何らの記載もないことが認められ、またそのように解すべき根拠もないから、前提において失当である。

右甲第二号証によれば、本願明細書には「汚染気体導入室」についてその作用効果について何ら特別の記載がないから、審決がこれを単に汚染気体導入空間と解し、引用例における「吸煙管19」と格別差異がないとしたことに誤りはない。

ⅱ  また、請求の原因(四)2(1)ⅱにおいて、原告は、引用例の考案における「推進螺旋5をもつ回転子R」は攪拌混流の作用をするものであつて、排煙を吸引し積極的に導入するものではない旨主張するが、前記甲第三号証によれば、引用例には「推進螺旋5によつて吸煙管19を通じて煙道排煙を混流機胴D内に吸引する」(一頁左欄末より四行目~二行目)、「洗滌された無煙無燼状態の排気は…………推進螺旋5の推進による気圧によつて排気管21を通じて煙突に圧送される」(一頁右欄一〇行目~一四行目)、「推進螺旋5の推進力による圧力によつて清浄排気を煙突に圧送放出する」(一頁右欄末より一二行目~一〇行目)との記載があることが認められ、これらの記載からすれば、引用例の考案における「推進螺旋5をもつ回転子R」も後記のようにその洗浄室である混流機胴D内に汚染気体を積極的に吸引導入する作用をするものであることは明らかである(そして、前記甲第三号証によれば、引用例の考案における回転子Rの推進螺旋5には外周から半径方向内方に延びる攪拌板4が設けられていること、引用例には「その水と排煙は共に………推進螺旋5によつて推進されつつその攪拌板4によつて強力に攪拌されて激しく混流作用を受け」(一頁右欄一行目~四行目)との記載があること等からみて、引用例における攪拌作用は主として攪拌板4によつて行われるものであつて、推進螺旋5は主として排煙及び水の推進作用をするものとみられる)から、引用例の考案における混流機胴Dと回転子Rとは構造的に一体不可分とされている点は別として、引用例の考案における「推進螺旋5をもつ回転子R」と本願考案における「螺旋翼をもつ回転体」は相当関係に立つということができる。

ⅲ  さらに、請求の原因(四)2(1)ⅲにおける原告の主張について、前記甲第二号証と甲第三号証をあわせ考えると、引用例の考案における「混流機胴D」は、その内部で回転子Rの回転により排煙と水とを攪拌混流する作用が行われて排煙を洗浄するものであるから、このようにその内部で汚染気体の洗浄を行うという点では本願考案における「洗浄室」の機能を有するものであり、また前記のようにその内部に汚染気体を積極的に吸引導入する推進螺旋5を有する回転子Rが挿入されている点で、右「推進螺旋5を有する回転子R」に相当する「螺旋翼をもつ回転体」を内部に挿入した本願考案における「導入管」の機能をも具備するものとみることができ、これらの点に関する審決の判断に誤りはない。

(3) そうだとすれば、本願考案と引用例の考案の相違は、本願考案が導入管と洗浄室とを別体に構成して、前者を後者の前に連結し、汚染気体を螺旋翼の回転により積極的に吸引導入する機能と、洗浄する機能とを別個の場所で行わせようとしたのに対して、引用例はこれらを一体にし、各機能を同じ場所で行うようにしている点に過ぎないことになり、これと同趣旨の審決の判断は正当であるといえる。

2 ところが、一般的に別個の機能を奏する部分を別体に構成することが慣用手段であり、例えば、空気浄化装置においても、空気取入れ用送風機、空気導入管、洗浄槽を別体に構成して順次接続することは従来極めて普通のことであることは原告の争わないところであるから、本件の場合も、本願考案が洗浄室と導入管とを別個に構成したことにより格別の(顕著な)効果を奏することができる等特段の事情が認められない限り、本願考案のような構成は、引用例に基づいてきわめて容易に想到できたというほかない。

(三)  そこで、本願考案は顕著な効果を奏しうるかどうかについて検討する。

原告が本願考案の作用効果として主張するもののうち、本願考案が自動車の排気の洗浄に関するものであるとの前提に立つ主張は、右前提が成り立たない(二(一)参照)から、失当である。

また、本願考案における「螺旋翼をもつ回転体」の回転に要する動力の大きさは導入管自体の内部構成のみによつて定まるものではなく、洗浄室の内部構成にもよるものであると考えられるところ、本願考案において洗浄室の内部構成については限定がないから、導入管と洗浄室を別体にしたからといつて、必ずしも動力が少なくてすむという根拠はなく、この点に関する原告の主張も失当である。

さらに、本願考案が洗浄室における洗浄処理手段として任意のものを用いうるという効果は、本願考案における洗浄室の内部構成が無限定であることから生ずる当然の効果であつて、とうてい格別の効果とはいえず、また汚染気体を積極的に導入しうるという効果も導入手段として螺旋翼を有する回転体を用いたことによる効果として引用例が推進螺旋5を有する回転子Rを用いていることから予測できる効果である。

(四)  そうすると、結局本願考案を引用例に基づいてきわめて容易に考案できたものとした審決の判断は正当として是認でき、審決を取り消すべき事由はない。

三  よつて、本訴請求を棄却することとする。

〔編註〕本願考案の要旨は左のとおりである。

汚染気体導入室と洗浄室とを導入管で連結し、この導入管内に吸引作用を生ぜしめる螺旋翼をもつ回転体を挿入して成ることを特徴とする汚染気体洗浄装置

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